絵描きにはマーケティングとか関係ないとか言ってられない。山本冬彦氏の提言まとめ

絵描きにはマーケティングとか関係ないとか言ってられない。山本冬彦氏の提言まとめ

アートソムリエとして有名なコレクター山本冬彦氏。彼は「観るアート」から「買うアート」への転換を提唱しています。

2月に東京の銀座にあるREIJINSHA GALLERYにて開催した『TUAD スプリング・アート・フェア in Tokyo 2016』にて行われました山本冬彦氏の「若手作家への提言」と題するトークイベントを彼の著書『週末はギャラリーめぐり』を参考にざっくりとまとめてみました。

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アートは構造不況業種

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山本冬彦氏曰く、アート界は『超構造不況業種』。構造不況って何?と思い調べると

不況の原因が景気循環によるものではなく、産業構造・需要構造・経済環境などの構造変動にあるとされる不況。

日本ではアート作品を供給する作り手は山ほどいますが、それを購入しようとする消費者が圧倒的に少ない。この歪な構造は如何ともしがたいところがあります。

プロの作家の養成や美術関連への就職のための美大だとしたら、そもそも需要と供給の関係で考えても、作品を買ってくれる企業や人、学芸員を雇ってくれる美術館や自治体も少ない中で、今のような大量の美大卒業生がいること自体がおかしいのである。

わかっていた話ではありますが、大量の美大卒業生の一人としてショックですね。ではなぜ消費者側が少ないのか。それにはいくつかの理由があります。

大口ユーザーの減少

絵描きにはマーケティングとか関係ないとか言ってられない。山本冬彦氏の提言まとめ

バブルがはじけ、大企業や資産家が絵画を買い漁る時代は今は昔。

また、企業はCSRの取り組みとして、何十億もの絵画を購入したとなれば、株主から何を言われるかわかりませんので、無難に自然環境や福祉に資金を充てるようになったとされています。

最近の日本では企業・美術館・資産家などの大口ユーザーが以前ほどの力を持たなくなってしまったので、個人ユーザーに期待しない限り、芸術家も生きていけない時代になりました。

アートを買うという発想がない

絵描きにはマーケティングとか関係ないとか言ってられない。山本冬彦氏の提言まとめ

日本人は週末ともなれば足しげく美術館に通う美術の大好き民族。にもかかわらず観に行くことをしても買うということはしません。

「美術館などでアートを見ることが好きな人」=「アートを買う人」ではないのです。

一般の人が作品を買えないのは、決してお金がないわけではなく、消費の選択の中に入っていないだけなのではないでしょうか。

普段絵を描いている人間や美術関係者では麻痺してしまっているかもしれませんが、やはり一般の人からすれば画廊というものは敷居は高いようです。

また、画廊など中に入ったら、高級なものを買わせられるという不安も一部ではあるのかもしれません。

一昔前に悪徳絵画販売業者がラッ〇ンなどの絵を強引に販売していたイメージがまだあるのかもしれませんね。

権威でアートを見る

絵描きにはマーケティングとか関係ないとか言ってられない。山本冬彦氏の提言まとめ

アート作品を判断する基準として、自分の素直な感性に従って評価を下せば良いと思います。自分が良いと思ったものは良いのです。

しかし、アート作品も安くはありませんので、購入するのであれば誰かが保証してくれている、裏付けをしてくれていれば安心できるのが人間心理です。

明確に評価が確定している画壇での地位や美術雑誌への掲載などの従来の権威に加え、昨今はテレビ出演も果たすアートタレントもメディアという権威が保証してくれたアーティストです。

※「権威」が変わっただけで、「権威依存」は変わっていない
日本人の大半が作品ではなく肩書き、地位、マスコミetcの評価で見る

若手作家はチャンス

絵描きにはマーケティングとか関係ないとか言ってられない。山本冬彦氏の提言まとめ

近年、20代や30代、学生などの若手作家にスポットが当たっています。

その理由としては作品価格がまだ安く、購入しやすいことが挙げられます。若くこれから伸びていきそうな作家の作品を青田買いしようという動向があるようです。

しかし、若い作家の安い絵は売れるが、年齢があがり、中堅の作家になり絵の価格が上がれば売れなくなっていきます。

さらに、美大から次々に若い新しい作家が排出されるので状況は悪くなっていきます。

なるべく若いうちに売れっ子作家側になれなければ、厳しいことが分かります。

真の芸術家or芸術企業家

絵描きにはマーケティングとか関係ないとか言ってられない。山本冬彦氏の提言まとめ

美術界で生きていく作家はふたつのタイプに分かれ、ひとつは『真の芸術家』、もうひとつは『芸術企業家』となります。

『真の芸術家』タイプは純粋な芸術を追及するスタイルとしています。

どこかで野たれ死にしてもよいという覚悟で、自分のアートを追及する

ただ、霞を食べて生きていくわけにもいかないので、作家活動とは別の仕事で収入を得て生活し、ひたすら自分の作りたいものを作っていくスタイルです。

『芸術企業家』タイプは文字通り企業家、自営業者としてアートを生業にするスタイルです。

マーケティング戦略、ファンサービス、広報作成etc

賛否はありますが村上隆のように市場を分析し、ニーズに合った作品を提供したり、時折テレビで取り上げられる「美人すぎる〇〇家」といった形で作品が紹介される作家も広報戦略がうまくはまって、売れている例です。

ただほとんどの作家は上記のタイプの間をふらふらと漂っているのが現状です。

美大を出て作家活動をするアーティストの多くが芸術企業家を目指しますが、上記の構造不況や権威依存の購買スタイルが大きな壁となっていて、多くの貧乏作家が生産されるシステムになっているのです。

恐ろしやです。

若手作家へのアドバイスとは

絵描きにはマーケティングとか関係ないとか言ってられない。山本冬彦氏の提言まとめ

厳しい現状の中、購入者側として山本冬彦氏は以下の配布資料からのアドバイスに加え「あらゆる分野を勉強して何とかするしかない。」と仰っていました。

  • 知らない人こそ大切に
  • 十分なマーケティングと時には積極的な売り込みも
  • 最大の敵は非アート商品
  • 自分の作品のファンを見つけよ
  • 独自のファンサービスとまめなアフターケア

etc

絵を描けば売れるというのはごく一部の超売れっ子。そうでない作家は売るための努力、自分の作品を欲してくれる人を見つけて、その人にどのようにアピールするかを真剣に考えないと、「いい絵が描けました。」ではだめなのだと痛感します。

手始めにマーケティングでも勉強してみますかね。

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